(少し古く、、本年 5月のプレスリリースです)
気管支喘息は、ダニ、ペットの毛、真菌(カビ)などの異物に有害反応を示すアレルギー疾患の一種です。典型的な病態の一つに、気道(鼻や口から肺までの空気の通り道)に炎症が起きるアレルギー性気道炎症があります。世界で3億人以上が気管支喘息に苦しんでいると考えられており注1)、公衆衛生の観点から気管支喘息の病態を理解し、発症因子を明らかにすることが急務となっています。

出生前および授乳期の母親のライフスタイルは、子どもの腸内細菌叢[5]に大きな影響を与えることが知られています。ヒトの大規模な疫学調査では、乳幼児期の腸内細菌叢の変化が気管支喘息をはじめとするアレルギー疾患の発症と相関しているという報告があります注2)。しかし、腸内細菌叢がアレルギー疾患の病態に働きかけるメカニズムの詳細は明らかではありませんでした。

近年、メタボローム解析[6]の発展に伴い、短鎖脂肪酸をはじめとする微生物の代謝物が腸の恒常性を維持する宿主免疫応答に影響を与え、その制御異常が疾患につながることが指摘されています。特に、短鎖脂肪酸の一種であるプロピオン酸はヒトを含む多くの動物の腸内における主要な微生物発酵代謝物であり、心肥大や線維化の予防、血管機能障害の抑制、大腸炎症の改善など、腸を越えて全身に多彩な健康増進効果を発揮していることが明らかになりつつあります。

以上の背景より、共同研究グループは腸内のプロピオン酸に注目することで、気管支喘息をはじめとしたアレルギー疾患と腸内細菌叢を結ぶ新しいメカニズムが解明できるのではないかと考えました。   (引用:理化学研究所 プレスリリース)