「幸せな人は長生きする」と聞くと、なんとなく納得できるようで、科学的な根拠を示されないと信じにくいかもしれません。しかし、実際に幸福感と健康寿命の関係を示す研究は数多くあり、世界中の専門家がこのテーマに注目しています。では、なぜ「幸せを感じること」が健康寿命を延ばすのでしょうか?

1. 幸福感が健康に与える影響とは?

幸福感とは、「自分の人生に満足している」「日々の生活に喜びを感じる」など、ポジティブな感情の総称です。この幸福感が健康寿命に影響を与える理由には、大きく分けて以下の4つの要因が関係しているとの事です。

ストレスの軽減
幸福感が高い人は、ストレスを感じにくく、ストレスホルモン(コルチゾール)の分泌が抑えられます。ストレスが慢性化すると、血圧の上昇や免疫機能の低下を引き起こし、生活習慣病のリスクが高まります。しかし、ポジティブな感情を持つことで自律神経のバランスが整い、健康を維持しやすくなります。

免疫力の向上
幸福感が高い人ほど、免疫力が強いことが研究で明らかになっています。例えば、ポジティブな気持ちを持っている人は、風邪やインフルエンザにかかるリスクが低く、病気になっても回復が早い傾向があります。これは、免疫細胞が活発に働くためと考えられています。

健康的な生活習慣
幸福感が高い人ほど、運動やバランスの良い食生活を積極的に取り入れる傾向があります。逆に、不満やストレスを抱えている人は、暴飲暴食や運動不足に陥りやすく、それが生活習慣病につながるリスクがあります。

社会的つながりの維持
幸福感を感じやすい人は、周囲との良好な人間関係を築くことができ、孤立しにくいという特徴があります。社会とのつながりがあることで、精神的な安定が保たれ、認知症やうつ病のリスクを低下させる効果も期待できます。

2. 幸福感と健康寿命を結びつける研究結果

実際に幸福感と健康寿命の関係を示す研究がいくつも存在します。

英国の長期追跡研究(ELSA)
イギリスで行われた「English Longitudinal Study of Ageing (ELSA)」の調査では、幸福感が高い人は死亡リスクが35%低いことが分かりました。また、心血管疾患の発症率が低く、身体機能の低下が遅い傾向も示されています。

日本の中之条研究
群馬県中之条町で10年間にわたって行われた調査では、幸福感が高い人ほど歩行量が多く、認知症の発症リスクが低いことが報告されています。また、炎症性マーカー(CRP)が低く、慢性疾患のリスクが低いことも明らかになりました。

アメリカの修道女研究(The Nun Study)
アメリカで行われた「修道女研究」では、若い頃にポジティブな言葉を多く使っていた修道女ほど長生きする傾向がありました。これは、幸福感がストレスを軽減し、認知機能の維持に役立つためと考えられています。

3. 幸福感を高めるためにできること

「幸福感を持つことが健康に良い」と言われても、「そんな簡単に幸せになれるの?」と思う方もいるかもしれません。しかし、日々の生活の中で少し意識するだけで、幸福感を高めることは可能です。

🔹 感謝の習慣を持つ
「今日はどんな良いことがあったかな?」と1日を振り返るだけでも、幸福感が増すことが研究で示されています。小さなことでも感謝を感じる習慣を持つと、ポジティブな感情が生まれやすくなります。

🔹 適度な運動をする
運動をすると脳内で「幸せホルモン」とも呼ばれるセロトニンやエンドルフィンが分泌され、幸福感が高まります。ウォーキングやストレッチなど、無理のない範囲で体を動かすことが大切です。

🔹 人とのつながりを大切にする
友人や家族と会話をすることで、心が安定し、幸福感が増します。コロナ禍以降、人との交流が減ったと感じる方も多いかもしれませんが、出来れば対面式の方が良いとは思いますが、オンラインでも良いので、可能な方は積極的に人と関わることが重要です。

🔹 好きなことをする時間をつくる
趣味に没頭する時間は、ストレスを解消し、幸福感を高めるのに効果的です。音楽、読書、料理など、自分が楽しめることを見つけてみましょう。

4. まとめ

幸福感と健康寿命には深い関係があり、ストレスの軽減、免疫力の向上、健康的な生活習慣、社会的つながりの維持といった要因が健康を支えています。研究でも「幸福感が高い人ほど健康で長生きする」ことが明らかになっており、幸福感を意識して生活することが、健康寿命を延ばす大切なポイントとなります。

日々の生活の中で、少しでも幸せを感じる時間を増やしてみませんか?その小さな積み重ねが、将来の健康につながっていくはずです。