~腹筋運動がもたらした変化と希望~

私は神経性疾患と共に約30年間生きてきました。その過程で最も苦労してきた問題のひとつが、「排泄障がい」でした。特に神経因性の便秘については、身体的な苦痛のみならず、社会的・心理的な負担も大きく、QOL(生活の質)を大きく左右するものだと日々感じております。

神経因性の排泄障がいは、疾患による神経の損傷や機能低下により、腸の動きが鈍くなったり、便意を感じにくくなったり、排便に必要な筋力が十分に働かなくなったりすることで生じます。下剤や浣腸などの薬剤に頼る生活は、ある程度は症状を軽減してくれますが、それだけでは改善しきれない「制約」も多くあります。

例えば私の場合、旅行は1泊が限度です。2日以上になると、排便の見通しが立たなくなり、不安の方が先に立ってしまいます。外出先でのトイレ事情も気になりますし、それによる神経性疾患の症状悪化にも繋がります。こうした状況は、決して私だけではありません。多くの神経疾患を持つ方々が、同様の悩みを抱えておられます。中には、実際に腸閉塞を起こし、緊急入院された方もおられます。

そんな私が、半年ほど前から取り組み始めたことがあります。それが「腹筋運動」です。特別な機器を使うわけでもなく、自宅で無理のない範囲での体幹トレーニングや腹筋の運動を、毎日少しずつ継続することを意識しています。

始めた当初は、便秘改善を主目的としていたわけではありませんでした。体幹を鍛えることで姿勢を良くしたり、日常生活での動作を少しでも楽にしたいという思いがきっかけでした。しかし、続けるうちに思いがけない変化が現れ始めました。

特にここ2か月ほど、明らかに排便に関して改善を感じるようになってきたのです。相変わらず薬の服用は続けておりますが、排便時の“いきみ”がしやすくなり、腸の中で便が「送り出されている」感覚が戻ってきたように感じています。以前は排便があったとしても「無理やり出している」ような感覚が強かったのですが、最近は「自然に出た」と思える回数が明らかに増えています。

医学的にも、腹筋の強化と便秘の改善には一定の関連があることが報告されています。排便には「腹圧」が必要であり、その腹圧を生み出すためには、腹直筋や腹斜筋などの筋肉が重要な役割を果たします。これらの筋力が低下すると、十分な“いきみ”ができず、便を押し出す力が弱まってしまいます。腹筋を鍛えることで、この押し出す力が補われ、排便がしやすくなると考えられているようです。

また、腹筋運動によって腹部全体の血流が良くなり、腸の蠕動運動が刺激されるという効果もあるようです。さらに、自律神経の働きが安定することによって、便意を感じる感覚や、排便リズムの改善につながるケースもあると聞いています。

もちろん、すべての方に同じ効果があるとは限りません。神経性疾患の種類や進行度、生活環境によって、できる運動の内容や程度は異なります。無理のない範囲で、自分の体調と相談しながら取り組むことが何よりも大切です。また、可能であれば理学療法士などの専門家に相談しながら行うことも、良いのかもしれません。

私自身、いまだに不安がゼロになったわけではありません。遠出の計画には慎重になりますし、毎日の排便管理は欠かせません。しかし、腹筋運動という「自分で取り組める手段」を得たことで、少しだけ自信が生まれたのも事実です。「今日は腹筋もやったし、きっと大丈夫だ」と思えるようになったことは、精神的にも大きな支えになっています。以前投稿しました「プラセボ効果」の変形になるのかもしれません笑。

排泄という行為は、人に話しにくいデリケートな問題でありながら、私たちの生活にとって不可欠な営みです。だからこそ、こうした情報を隠さず、共有していくことが、同じ悩みを持つ方々の支えになるのではないかと思っています。

本投稿が神経性疾患とともに生きる方々、そしてそのご家族や支援者の皆さまにとって、少しでも参考になれば幸いです。そして、ひとりでも多くの方が、自分の身体と向き合いながら、より良い生活を築くための一歩を踏み出すきっかけになればと願っております。