社会における返報性(へんぽうせい)とは、人々が他者から受けた行為に対して、何らかの形でその行為に応じることを指します。つまり、他者から親切や支援を受けた場合には、その恩に報いようとする心理的な傾向や行動を意味します。この概念は、社会的な相互作用や人間関係の基盤となる重要な要素です。

返報性の基本的な原則
恩返しの原則: 誰かから利益や好意を受けた場合、その恩を返す義務を感じることが多いです。この原則は、友情やビジネス関係においても見られ、長期的な関係を築くための信頼感を生み出します。
対抗的返報性: これは、相手が攻撃的な行為を行った場合、その行為に対して報復的な行動を取ることを指します。これも一種の返報性であり、負の側面ですが、人間関係や社会秩序の中で重要な役割を果たします。
文化的な差異: 返報性の表れ方は文化によって異なります。例えば、日本では「お返し」の文化が非常に強く、贈り物を受けた際には何かしらの形でお返しをすることが期待されることが多いです。(この事により、長いお付き合いができるとも言えます。お中元・お歳暮など)

返報性の影響
社会的な返報性は、個人間の信頼や協力を促進し、社会の安定性を維持する重要な役割を果たします。また、ビジネスにおいても、取引や交渉の場面で、返報性が円滑なコミュニケーションや関係の維持に寄与することがあります。

返報性の応用
マーケティング: 企業が消費者に試供品やサービスを無料で提供することで、消費者はその企業に対して好意的な感情を抱き、将来的な購買行動につながることがあります。
人間関係: 返報性を理解し、適切に活用することで、友好関係を築いたり、職場での協力関係を強化することが可能です。

返報性は、人間社会における基本的な相互作用の一部であり、これを理解し活用することで、より良い人間関係や社会的な繋がりを構築することができます。一方、社会福祉等の領域において、一方通行の『親切や支援』が至極当然の事と思われている現実がある事は否めません。20年近くその中におりますと、受け手側の精神の未醸成と言いますか、「弱者救済は当たり前」の様な考えの方々が多いようです。小さなことを含めると、社会への返報はいくらでも可能と思うのですが。

そのあたりを書いてみます。あくまでも私見です。

  1. サービス受益者の依存と自立のバランス
    社会的弱者はしばしば多くの支援を必要としますが、その一方で支援に対する依存が強まると、自立心や感謝の気持ちが薄れ、サービスが当然の権利であると感じることがあります。これは「エンタイトルメント(権利意識)」の問題とも関連しており、自分が受ける支援を当然視することで、感謝や返報性が薄れてしまうことがあります。
  2. 返報性の教育と意識啓発
    返報性は社会的な相互関係を支える重要な要素ですが、その重要性が理解されていない場合、意識的に教育や啓発を行う必要があります。例えば、患者団体や連合会内で返報性に関する教育プログラムを導入することで、支援を受けることと同時に、自分も社会に対して何かを返すという意識を持ってもらうことが可能と思います。

3.感謝の気持ちを育むための環境作り
感謝の気持ちは、自発的に生じるものでもありますが、環境によっても育まれます。例えば、患者会の活動の中で、他者に感謝を伝える場や、支援者に対する感謝のイベントなどを定期的に設けることで、感謝の気持ちを育てることができます。また、小さな貢献でも返報性を感じられるようなプログラムを作ることで、彼らが「感謝して返す」ことの喜びを経験できるようにすることが有効です。

4.官民の支援サービスの見直し
支援サービス自体がどのように提供されているかも見直すべきかもしれません。サービスが一方的に提供される形ではなく、受益者が何らかの形で参加や貢献できる仕組みを導入することも考えられます。例えば、ボランティア活動の参加や、体験談の共有など、受益者が自分の経験を社会に還元できる場を設けることが考えられます。

5.心理的なアプローチ
心理的な側面から言えば、長期間にわたる支援の受益者は、しばしば自己効力感や自尊心が低下し、返報する力がないと感じることもあります。そのため、返報性を強調するだけでなく、彼らが自分にも返報できる能力があるという自信を持たせるサポートが重要です。

    以上のように、社会全体のスキルアップを考えた場合、書いてきました部分のアプローチはこれからの患者団体として取り組むべき事と思っております。あくまでも社会は『返報性』が基本となっており、それが熟成してくると受益者の精神的『負のマインド』も改善されるかと思います。