~物忘れが頻繁に起こるのは加齢のせいなのか?~
少し勉強して、自分を考えてみると、こうなった。

1. 脳の「物忘れ」のメカニズムを例え話で知る

まず、私たちの脳の中で「記憶」がどのように扱われているのかを、「整理整頓された書類キャビネット」に例えて考えてみましょう。

脳が記憶を処理するステップは、大きく分けて次の3つです。

  1. 覚える(インプット): 書類をキャビネットにファイルする
  2. 保つ(キープ): 書類をそのまま保管しておく
  3. 思い出す(アウトプット): 必要なときに書類を引き出しから探して持ってくる

「人の名前が出てこない」「ど忘れする」というのは、この3つのステップのどこかでエラーが起きている状態です。

「加齢」が原因の場合の引き出しの状態

年齢を重ねることで起きる変化は、実は「キャビネットの書類が消えてなくなる」わけではありません。「キャビネットが巨大化し、書類の量が増えすぎて、目当ての1枚を探し出すのに時間がかかっている状態」です。 これまでにたくさんの人と出会い、豊富な経験を積んできたからこそ、脳のデータベースが膨大になり、検索に時間がかかっているのです。そのため、「あ、あの人!」と後から時間差で思い出すことができるのが特徴です。

では、年齢のせいではないとしたら、一体何が原因で引き出しがスムーズに開かなくなっているのでしょうか。主な原因を4つの視点から見ていきましょう。

2. 単純な加齢ではない「4つの現代的な原因」

① 脳の「ゴミ箱」が満杯?――睡眠不足と脳の疲労

私たちの脳は、起きている間にたくさんの活動をして疲労物質(いわば脳のゴミ)を溜め込みます。このゴミをきれいに掃除して、昼間の記憶をキャビネットに綺麗に整理整頓してくれるのが「睡眠」の時間です。

もし、睡眠の質が落ちていたり、時間が足りていなかったりすると、脳の掃除が終わりません。机の上に書類が散乱したまま翌朝を迎えるようなものです。これでは、新しい名前を覚えるスペースもありませんし、古い記憶を探そうにも、散らかった机のせいで見つからなくなってしまいます。

② 情報の「集中豪雨」――スマホやPCによる脳過労

現代の私たちは、スマートフォンやパソコンから、かつてないほどの大量の情報を浴びています。ニュース、SNS、動画、メールなど、意識していなくても脳は常にフル回転で情報を処理しています。

これを「脳過労(インプット過多)」と呼びます。脳の処理能力(ワーキングメモリと呼ばれる、机の広さのようなもの)には限界があります。スマホによって常に机の上が情報で埋め尽くされていると、目の前の相手の名前を「しっかり覚える(ファイルする)」ためのスペースが残りません。 「相手の名前が覚えられない」というのは、記憶力が落ちたのではなく、そもそも脳の机が狭くなっていて、最初から記憶として机に置けていない(インプットできていない)可能性が高いのです。

③ 心のエネルギーの漏電――ストレスや不安、マルチタスク

仕事のプレッシャー、人間関係の悩み、あるいは「あれもこれもしなきゃ」というマルチタスク(同時並行の作業)状態にあるとき、心と脳は大きなエネルギーを消耗しています。

ストレスや不安を抱えているとき、脳は無意識のうちに「その脅威から自分を守ること」にリソースを割いてしまいます。すると、人の名前を覚えるといった「今すぐ命に関わらないこと」への注意力が著しく低下します。 心に余裕がないときは、記憶のキャビネットの前に常に霧がかかっているような状態になり、引き出しの場所すら見えなくなってしまうのです。

④ 「覚える必要性」の低下――脳のサボり癖

昔に比べて、私たちは人の電話番号や住所、漢字などを覚えなくなりました。なぜなら、スマホがすべて記憶してくれるからです。 相手の名前も、後から名刺管理アプリやSNSで検索すればすぐに分かります。脳は非常に省エネな臓器なので、「自分で覚えなくても、外の機械が覚えてくれる」と判断すると、覚えるためのスイッチを入れなくなります。 「名前が覚えられない」のは、脳の能力が低下したのではなく、脳が「覚えよう」とする警戒モードをオフにしているから、という側面もあるのです。

3. 「病気としての物忘れ」との違いはどこにある?

「そうは言っても、やっぱり認知症などの病気ではないかと心配…」と思われる方もいるかもしれません。ここで、いわゆる「加齢や疲れによる物忘れ」と「病気(認知症など)による物忘れ」の、分かりやすい見分け方を整理しておきましょう。

状態・症状加齢・ストレス・疲労による物忘れ病気(認知症など)による物忘れ
名前の忘れ方「顔は分かるが、名前がどうしても出てこない」「その人と会ったこと自体、関係性そのものを忘れる」
忘れたことへの自覚「最近、物忘れがひどくて困る」と自覚し、焦る忘れていること自体に気づかない、自覚がない
ヒントを出されたら「○○さんだよ」と言われると、「あぁ、そうだった!」と思い出すヒントを出されても、ピンとこない
生活への支障思い出すのに時間はかかるが、日常生活は問題なく送れる買い物の計算ができない、道に迷うなど、生活に支障が出る

このように、「名前が出てこなくて、自分で『おかしいな』と焦っている」状態であれば、それは病気ではなく、脳の疲労や一時的なキャビネットの混乱である可能性が非常に高いと言えます。

4. 脳の「引き出し」をスムーズにするための、簡単な日常の工夫

原因が「単純な加齢だけではない」と分かれば、対策が見えてきます。脳を少し休ませ、引き出しを整理しやすくするための、誰でもできる簡単なアプローチをいくつかご紹介します。

1. 「スマホ断食」の時間をあえて作る

1日のうち、例えば「食事中」や「お風呂上がり」「ベッドに入ってから」はスマホを触らない、という脳の休息時間を強制的に作ってみてください。入ってくる情報を遮断することで、脳の机の上が片付き、記憶を整理する余裕が生まれます。

2. 人の名前は「復唱」と「エピソード」で紐付ける

相手の名前を一度で覚えられないときは、インプットの仕方を工夫します。

  • 復唱する: 「○○さんですね、よろしくお願いします」と、自分の口で発音して耳から再度入れます。
  • 映像やエピソードと結ぶ: 「ネクタイが素敵な○○さん」「出身が同じ○○さん」というように、名前単体ではなく、視覚情報やエピソードと一緒にキャビネットに保管すると、後から引き出しやすくなります。

3. 「思い出そうとする時間」を大切にする

名前が出ないとき、すぐにスマホで検索したり人に聞いたりせず、「15秒だけ自力で思い出そうとする」時間を作ってみてください。「あ・い・う・え・お…」と頭文字を辿るだけでも効果的です。この「思い出す作業(検索行動)」そのものが、脳の回路を太くし、引き出しをスムーズに開けるための最高のトレーニングになります。

4. 睡眠の「最初の90分」を深くする

睡眠時間を急に増やすのが難しくても、寝る前のスマホを控え、ぬるめのお風呂に浸かるなどして、眠り初めの質を高めてみてください。脳のゴミ出しがスムーズに行われ、翌朝の脳のすっきり感が変わってきます。

まとめ:あなたの脳は、今ちょっと「お疲れモード」なだけ

「ど忘れ」や「名前が出ない」というのは、脳からの「今、ちょっと情報が多すぎて処理が追いついていないよ」「少し脳を休ませてね」というサインであることがほとんどです。

決して「年齢のせいで、もう自分の脳は衰えていく一方なんだ」と悲観する必要はありません。むしろ、これまでたくさんの経験を脳に蓄積してきた証拠であり、現代の忙しい社会を一生懸命生きている証でもあります。

まずは「年齢のせい」と諦めず、「最近ちょっと脳を酷使しすぎていたかな?」とご自身の生活を振り返り、脳に余白(リラックスする時間)を作ってあげることから始めてみてはいかがでしょうか。

おまけ

人と議論や会話をするときに、「言葉クセ」という、自分でも分かっているが改められないものがありませんか?

例えば「さっき言ったように」と、さっき言ってない内容をしゃべりだす。「今、言ったように、、」と、今言っていないことを平気でしゃべりだす。というように、人には意識せずつい出てしまう「言葉クセ」があると思うのです。歳を重ねてくると特に出現するのでは?そう思っていますが、それも、どこかのキャビネットが満杯状態ではないのでしょうか。その事を意識しながら人との会話を「ひつこいな~」と思われないようにしなければと、思う今日この頃です。皆さんも思い返してください。