現代の心理学や教育、そしてビジネスの現場において、「自己肯定感」や「自己効力感」という言葉は頻繁に登場します。しかし、これらの言葉は似たように使われることも多く、混同されがちです。実際、「自己肯定感が高い=自己効力感も高い」と思われることもありますが、両者は似て非なる概念なんですね。それぞれの定義と違い、そしてそれぞれが人の生き方にどのように影響するのかを考えてみます。これを意識する事、知る事により何かが変わってきますよ。

●私がこれまでの経験した事、そして勉強した事を、私の頭で考えながら書いてみます。もし、違うご意見をお持ちになっておられても、あくまでも私の意見ですので、そのあたりはご理解ください。

1.自己肯定感とは?

自己肯定感とは、「ありのままの自分を受け入れ、大切に思える気持ち」のことです。言い換えれば、「自分は存在しているだけで価値がある」「完璧ではなくても自分には意味がある」と感じられる感覚です。これは、結果や能力に依存しない、いわば「存在そのものへの信頼」と言えるでしょう。

自己肯定感は、幼少期の親子関係や学校生活、人間関係などによって大きく影響を受けます。特に「無条件の愛情」や「受容的な関わり」を経験することで育まれやすいとされています。

たとえば、失敗しても「あなたはあなたのままでいいんだよ」と言ってもらえる環境では、子どもは「自分は失敗しても価値のある人間なんだ」と思うようになります。これが自己肯定感の土台です。否定をされない環境が大切と考えます。

2.自己効力感とは?

一方で自己効力感とは、「自分には目の前の課題をうまくやり遂げる能力がある」と信じる気持ちのことを指します。これはアメリカの心理学者アルバート・バンデューラによって提唱された概念で、より「行動」や「目標達成」に関係するものです。

たとえば、「このプレゼンはきっと成功できる」「初めてのプロジェクトでも、なんとかできるはずだ」と思える人は、自己効力感が高いと言えます。この感覚は、経験の積み重ね、成功体験、他者からの励ましなどによって強化されていくものと思います。

自己効力感が高い人は、困難な課題にも前向きに取り組みやすく、失敗しても「また挑戦しよう」と立ち上がることができます。

3.違いを整理すると?

ここで、両者の違いを明確に整理してみましょう。

比較項目自己肯定感自己効力感
定義ありのままの自分を価値ある存在と感じる感覚自分の行動能力・達成可能性への信頼
何に対する感覚か自分自身の存在自分の行動や達成力
基盤無条件の受容や愛情成功体験や周囲の支援
影響精神的な安定、幸福感モチベーション、行動力、挑戦心
「自分はここにいていい」「この仕事は自分にできる」

つまり、「自己肯定感」は「存在の肯定」、「自己効力感」は「行動の肯定」と表現すると、その違いがより明確になるでしょうかね。

4.両者はどう関係するか?

両者は独立した概念ですが、互いに影響し合っていると考えています。

たとえば、自己肯定感が高い人は、たとえ失敗しても「自分はダメな人間だ」とは思いにくく、「また挑戦しよう」と思いやすい傾向があるのですよね。これは結果的に自己効力感の回復や維持にもつながります。

逆に、自己効力感が高い人は、成功体験を重ねることで自分の存在への信頼感が増し、自己肯定感の向上につながることもあります。ただし、必ずしも両方が高いとは限らないと考えます。

自己肯定感は高いが、自己効力感が低い人
「自分には価値があるけど、〇〇はちょっと苦手かも」といった具合に、存在は肯定しつつ行動には自信が持てない状態。

自己効力感は高いが、自己肯定感が低い人
「やればできるけど、失敗したら自分には価値がないと思ってしまう」といった、行動には自信があるが、存在そのものを受け入れられない状態。
こうしたアンバランスは、自己理解や精神的健康に影響を与えることもあるでしょう。

5.まとめ:どちらも大切に育てるべき

現代社会では「できるかできないか」による評価が強調されがちで、自己効力感ばかりが重視される傾向があります。しかし、それだけでは心が疲弊しやすく、自己肯定感の低下を招く恐れがあると思います。

重要なのは、「何ができるか」だけでなく「自分という存在そのものが大切だ」と思えることです。自己肯定感がしっかりと育まれていれば、たとえ困難な課題に直面しても、自分を責めすぎず、前を向く力が湧いてくるでしょう。

そして同時に、自己効力感を高めることで、挑戦する勇気や成長する喜びを感じられるようになります。

このように、自己肯定感と自己効力感は車の両輪のようなもので、どちらか一方だけでは健やかな人生は難しいかもしれません。日々の暮らしの中で、自分自身の「存在」と「行動」の両方にやさしく目を向け、育んでいくことが大切です。