
筆記療法(ジャーナリング・ライティングセラピー)は、心の整理や自己理解を深めるための有効な手段として、近年ますます注目されています。特に、ストレスの軽減やトラウマの処理、自己肯定感の向上など、精神的な健康に良い影響をもたらすことが多くの研究で示されています。
筆記療法の良い点は、「言葉にすることで自分の感情や考えを客観視できる」ことだと思います。いつも心がけている 「会話を通じてつながる」 という事と通じる部分があるとも、思っています。音楽の歌詞が人の心を揺さぶるように、言葉を書き出すことで、自分自身の心を動かすことができるのではないでしょうか。
他方、筆記療法は「対話」ではなく「独白」なので、他者の反応を気にせずに済む点もメリットです。普段、人と話すときは無意識に相手の目線や感情を考えますが、書くことは純粋に「自分のための行為」として機能します。これは、孤独を感じている人や、他者とのコミュニケーションが苦手な人にも有効だと考えます。さらには、嫌な事に慣れたり、出来事の解釈目線が変わったり、状況の分析なども可能になるでしょう。
具体的な例
- トラウマの整理
ある研究では、戦争体験を持つ退役軍人が過去の経験を詳細に書くことで、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状が軽減されたことが報告されています(ペンネベーカーの研究が有名です)。自分の感情を隠さずに書くことで、心の負担を減らせるのです。 - 感情の安定
例えば、日記を書く習慣のある人は、ネガティブな感情を整理しやすく、幸福度が高まりやすいというデータもあります。「今日はイライラした。でも、その理由を考えると、自分の期待と現実のズレに原因があると気づいた」など、書くことで冷静になれることも多いです。 - 問題解決思考の促進
例えば、「自分はなぜ今の仕事に不満を感じているのか?」という問いを立て、それに対して思いつくままに書き出してみると、「単に疲れているだけなのか」「本当に仕事が合っていないのか」「人間関係に問題があるのか」など、原因が整理されます。

さらに具体化すると・・・
① エクスプレッシブ・ライティング(感情表出のライティング)
- 方法: 過去の辛い経験や現在抱えている悩みについて、感じたことを制限時間内(例:15分)で自由に書く。誤字脱字や文法は気にせず、思いのままに書く。
- 例: 「最近、人間関係の悩みで気持ちが沈んでいる。なぜこんなに傷つくのか?相手の態度が冷たく感じるけれど、本当のところはどうなんだろう?もしかしたら、自分の考えすぎかもしれない。でも、この気持ちを無視せず大切にしたい。」
② 感謝日記(グラティテュード・ジャーナル)
- 方法: 1日の終わりに、その日に感謝できることを3つ書く。
- 例:
- 今日、友人が私の話をじっくり聞いてくれたことに感謝。
- 天気が良く、散歩が気持ちよかったことに感謝。
- 好きな音楽を聴いてリラックスできたことに感謝。
③ 未来ジャーナリング(ポジティブな未来の想像)
- 方法: 未来の理想的な自分の姿や実現したいことについて、現在形で書く(「すでに実現している」感覚で書くと効果的)。
- 例: 「私は充実した日々を送っている。自分のやりたいことに熱中し、多くの人と良い関係を築けている。健康にも気をつけ、心身ともにバランスが取れている。」
④ 自己対話ライティング
- 方法: 自分の悩みや疑問に対して、もう一人の自分が対話するように書く。
- 例:
- 私: 「最近、自信がなくて何をしても上手くいかない気がする。」
- もう一人の私: 「本当に何も上手くいってない?これまで頑張ってきたことを振り返ってみよう。

筆記療法のポイント
- 書いたものを見返すかどうかは自由(エクスプレッシブ・ライティングなどは破棄してもOK)
- 手書きでもデジタルでも可(手書きのほうが効果的とする研究もある)
- 毎日でなくても、気が向いたときに行うだけでも十分効果がある

以上のように手法や効果等を書いてきました。各々の方法でやりやすい形を取りながら、感情の抑制を求められる現代社会を「心身ともに健康」を持続しましょう。