第三者効果(Third-Person Effect)は、社会心理学やメディア研究の分野で用いられる概念で、人々がメディアの影響を他人には強く及ぼすと信じる一方で、自分自身にはあまり影響を受けないと考える傾向を指します。これだけでは意味が良く分からいと思うので例を出しながら説明します。

概要とメカニズム
認知的バイアス:
人々は、メディアの影響力を過大評価し、それが他人に強い影響を及ぼすと考えます。自分自身はその影響から免れる、または影響を受ける程度が少ないと信じます。
行動への影響:
この認識が行動に影響を与える場合がありまして、例えば、メディアの内容が有害だと信じる人々が、その内容の規制を求める行動をとることがあります。

実証例
政治広告:
政治広告が有権者の投票行動に強い影響を与えると考え、他人がその広告に影響されることを懸念する人々が多い。自分は広告の影響をほとんど受けないと感じるが、他の有権者には大きな影響を与えると考える。
暴力的なメディアコンテンツ:
暴力的な映画やゲームが若者に悪影響を与えると信じる親や教育者が多い。自分自身や自分の子供はその影響を受けにくいと信じる一方で、他の子供たちに悪影響が出ることを懸念する。
その他、効果の具体的な実証例
健康関連広告:
禁煙やダイエットの広告は他人には強い影響を与えると考える一方、自分にはあまり影響を受けないと信じる。
アルコールや薬物の予防キャンペーン:
自分よりも他人(特に若者)がキャンペーンの影響を強く受けると信じる。
ポルノグラフィ:
ポルノコンテンツが他人の性的行動や態度に影響を与えると考えるが、自分は影響を受けないと信じる。
インターネット上の誤情報:
フェイクニュースや誤情報が他人には強く影響すると考える一方で、自分は正しい情報を見極められると信じる。
SNSの影響:
ソーシャルメディア上の情報やトレンドが他人(特に若者)には強い影響を与えるが、自分はそれほど影響を受けないと感じる。
テレビの暴力描写:
暴力的なテレビ番組が他の視聴者(特に子供)には影響を与えると考えるが、自分は影響を受けないと信じる。
ギャンブル広告:
ギャンブルの広告が他人(特にギャンブル依存症の人)には影響を与えるが、自分は影響を受けないと考える。
選挙キャンペーン:
政治的なキャンペーンが他の有権者に大きな影響を与えると信じるが、自分は影響を受けないと感じる。
健康危機の報道:
疾病やパンデミックに関する報道が他人を不安にさせ行動を変えさせると信じるが、自分は冷静に対処できると感じる。
消費者商品のレビューや口コミ:
オンラインレビューや口コミが他の消費者には強く影響すると考えるが、自分はそれほど影響を受けないと感じる。

これらの例は、第三者効果が幅広い状況やコンテキストで観察されることを示しており、メディアやコミュニケーションの影響に対する人々の認識の違いを明らかにします。

第三者効果の理由
第三者効果が生じる理由にはいくつかの理論が存在します。
認知的不協和:自分が影響を受けることを認めることが自己認識と矛盾するため、他人が影響を受けると信じることで不協和を避けようとします。
社会的望ましさバイアス:
自分がメディアの影響を受けやすいことを認めるのは、知的で批判的な自己像と合わないため、他人にその影響を投影します。
距離の効果:
自分に近い存在(家族や友人)には影響が少ないと感じる一方、距離のある第三者(社会全体や他の集団)には影響が強いと感じる。

さらに書きますと・・・
第三者効果が生じる理由は複数の心理的および社会的要因に基づいています。以下に、その主な理由を身近な例で詳しく説明します。

  1. 認知的不協和
    概要: 認知的不協和理論は、人々が自己認識と矛盾する情報や信念に直面すると不快感を感じ、その不快感を減少させようとする心理的傾向を指します。
    適用: 自分がメディアの影響を受けやすいと認めることは、自己評価や自己認識(自分は理性的で批判的思考ができる人間であるという認識)と矛盾するため、不協和を避けるために「他人が影響を受けやすい」と考えるようになります。
  2. 社会的な『望ましさ』バイアス
    概要: 社会的望ましさバイアスは、他人からの評価や社会的期待に応えるために、自分の行動や信念を実際よりも望ましいものとして表現する傾向です。
    適用: メディアの影響を受けやすいと認めることは、知的で自律的な自己像にそぐわないため、他人に影響を受けやすいと投影することで、自分がより批判的であるように見せようとします。
  3. 自己奉仕バイアス
    概要: 自己奉仕バイアスは、自分の成功を内的な要因(能力や努力)に帰し、失敗を外的な要因(運や他人の影響)に帰する傾向です。
    適用: 自分がメディアの影響を受けないと信じることは、自分の批判的思考や判断力を過大評価する自己奉仕バイアスの一部として機能します。
  4. 自己防衛メカニズム
    概要: 自己防衛メカニズムは、心理的な防衛反応であり、ストレスや不安から自分を守るために無意識に働く心の働きです。
    適用: メディアの影響を他人に投影することで、自分が操られているという不快な認識から自分を守ります。
  5. 第一次情報と第三次情報の違い
    概要: 人は自己に関する情報(第一次情報)と他人に関する情報(第三次情報)を異なる基準で評価する傾向があります。
    適用: 自分については詳細な情報を持ち、理性的な判断ができると感じる一方、他人については一般化されたイメージやステレオタイプに
    基づいて判断することが多いです。
  6. 距離の効果
    概要: 人は自分に近い存在と遠い存在に対して異なる評価を下す傾向があります。
    適用: 自分や自分に近い存在(家族や友人)はメディアの影響を受けにくいと感じる一方、社会全体や遠い存在にはその影響が強いと感じます。
  7. メタ認知
    概要: メタ認知は、自分の思考プロセスを認識し、評価する能力を指します。
    適用: メタ認知によって、自分の判断力や批判的思考の能力を過大評価し、他人がそのようなメタ認知能力を持たないと考えがちです。これらの要因が相互に作用し、第三者効果が生じるメカニズムを形成しています。理解することで、メディアの影響に対する認識の違いや、その結果としての行動変化をより深く洞察することができます。

    結論
    第三者効果は、メディアの影響を理解する上で重要な概念であり、メディア消費者の行動や意識に対する洞察を提供します。この効果を理解することで、メディアの影響に対する人々の認識の違いを明らかにし、メディアリテラシー教育や政策決定に役立てることができると思うので私達も振り回されないように理解をしておくべきと思います。