(理化学研究所 ホームページより引用)
ー腸内細菌を利用した糖尿病の治療介入につながる成果ー
■背景
2型糖尿病はインスリンの働きが悪くなる「インスリン抵抗性」が基盤となり、高血糖を呈する疾患です。2型糖尿病は日本のみならず世界中で患者が増加しており、また、心臓病、腎臓病、網膜症による失明など重篤な合併症の原因になることから、その機序解明が望まれています。近年さまざまな研究により、2型糖尿病やその背景にあるインスリン抵抗性に、腸内細菌が関与していることが示唆されています。
しかし、これら多くの研究はある種の腸内細菌とインスリン抵抗性との関連を示唆するのみで、その機序を示すことは困難でした。その一因として、従来のヒト腸内細菌の研究は細菌の種類およびその遺伝子を調べるメタゲノム解析[7]が一般的であり、疾患を直接的に制御する腸内細菌代謝物のような低分子化合物に関する知見が不足していたことが挙げられます。
そこで、共同研究グループはヒト検体の統合オミクス解析により腸内細菌に関する情報を網羅的に調べることで、腸内細菌がインスリン抵抗性の病態にどのように関与しているかを多角的に調べることにしました。特に、膨大な低分子化合物を探索できるメタボローム解析[8]の併用により、腸内細菌の遺伝子だけでなく、ヒトの生理機能に直接影響を与える腸内細菌からの"メッセンジャー"としての役割を果たす代謝物を探索することで、腸内細菌の直接的な役割をより的確に調べることにしました。
なお本研究は、理研、東京大学、NIBIOHN、KISTECとの共同研究であると同時に、2013年理研統合生命医科学研究センター(現生命医科学研究センター)発足時に開始したセンタープロジェクトの一つであり、センター内外から多くの研究者が参加して実施されました。