
「医療費のお知らせ」を、あなたは確認していますか?
~患者自身が医療費をチェックすることは、医療を守ることでもある~
病院やクリニックに行った後、皆さんは「医療費のお知らせ」を確認していますか?
国民健康保険などに加入していると、行政や保険者から、医療機関を受診した年月、医療機関名、医療費の総額などが記載された「医療費のお知らせ」が届きます。
私はこれまで、患者会活動を通じて、多くの医療機関や医師の方々と関わってきました。
だからこそ、今回この問題を取り上げることには、正直なところ迷いがあります。
医療機関と患者会は、決して対立する関係ではありません。むしろ、患者にとってより良い医療を実現するためには、医師、医療機関、患者、患者会が互いに信頼し、協力していくことが必要です。
しかし、その「信頼」を守るためにも、患者側が確認すべきことは確認しなければならない。
そう感じる出来事が、現在、私自身の身近なところで起こっています。

「領収書」と「医療費のお知らせ」が大きく違っていた
現在、私が確認しているケースでは、あるクリニックについて、患者が保管している領収書の金額と、行政から届いた「医療費のお知らせ」に記載された医療費の金額に、著しい差がありました。
もちろん、医療費のお知らせと領収書の金額が、常に完全に一致するとは限りません。
保険適用外の費用が含まれない場合や、公費助成などの関係で、実際に窓口で支払った金額と通知上の金額が異なる場合があります。また、医療機関からの請求時期や審査の関係で、通知に反映される時期がずれることもあります。
だからこそ、単純に「金額が違う=不正」と考えてはいけません。
ところが今回のケースでは、そうした事情だけでは説明が難しいと思われるほど、大きな差が確認されました。
中には、患者が実際に支払った金額と比較して、医療費のお知らせに記載された医療費が約5倍になっている月もありました。
しかも、同じクリニックについて、家族の分も含めて複数回、同様の差異が確認されています。
現在、私はそのクリニックに対して、まずは具体的な説明を求めています。
ここで重要なのは、現時点で私が「意図的な不正請求だった」と断定しているわけではないということです。
何らかの事務上の誤りや、診療報酬制度上の理由がある可能性も含めて、まず事実関係を明らかにすることが必要だからです。

医療費通知は「ただの明細」ではない
では、なぜ患者が「医療費のお知らせ」を確認する必要があるのでしょうか。
それは、私たちが支払っている医療費の大部分が、患者自身の窓口負担だけで成り立っているわけではないからです。
健康保険制度では、患者が窓口で支払う自己負担分に加え、保険料や公費などを財源として医療費が支払われています。
つまり、医療機関から保険者に請求される診療報酬は、患者個人だけの問題ではありません。
社会全体のお金が動いているのです。
厚生労働省も、保険医療機関等の診療報酬請求について、指導や監査の仕組みを設けています。
実際、厚生労働省が公表している令和6年度の実施状況では、架空請求、付増請求、振替請求、二重請求など、さまざまな不正請求が確認されています。そして、指定取消・指定取消相当となった事案の端緒の多くが、保険者や医療機関従事者、そして「医療費通知に基づく被保険者等からの情報提供」でした。
これは、非常に重要なことではないでしょうか。
患者が「おかしい」と気づくことが、医療制度を守るきっかけになる。
そういうことが実際に起こっているのです。

「先生を疑う」のではなく、「自分の医療を確認する」
私は、患者に「医師を疑いましょう」と言いたいわけではありません。
むしろ逆です。
本当に信頼できる医療をつくるためには、患者も自分の受けた医療について関心を持つことが大切だと思っています。
診察を受けた。
検査を受けた。
薬を処方された。
そして、その医療についてどのような費用が発生しているのかを確認する。
これは、患者として当たり前の権利であり、同時に社会の一員としての責任でもあるのではないでしょうか。
「先生に任せておけば大丈夫」
「医療費のことは難しいから分からない」
そう考えてしまう気持ちもよく分かります。
しかし、それ故、少なくとも手元にある領収書と「医療費のお知らせ」を、一度照らし合わせてみることをお勧めします。
現在では、マイナポータルなどで医療費通知情報を確認できる仕組みもあります。

「おかしい」と思ったら、まず記録する
もし、領収書と医療費のお知らせを比較して「これは明らかにおかしいのではないか」と感じたら、感情的に医療機関を責めるのではなく、まず記録を残すことです。
・受診した日
・実際に窓口で支払った金額
・領収書の内容
・医療費のお知らせに記載された金額
・診療回数
・家族分を含めた同様の事例
・医療機関から受けた説明
こうした情報を整理しておくことが重要です。
そして、医療機関に確認しても納得できる説明が得られない場合には、加入している健康保険の保険者などに相談する方法があります。
必要に応じて、本人が診療報酬明細書(レセプト)の開示を請求できる制度もあります。例えば協会けんぽでは、本人などからの請求に応じてレセプトの開示を行っています。

医療機関との信頼関係を守るためにも
今回の出来事を通して、私自身が改めて感じていることがあります。
それは、
「信頼すること」と「確認しないこと」は、同じではない。
ということです。
私たち患者会にとって、医師や医療機関との関係は非常に大切です。
病気になったとき、患者の不安や苦しみに寄り添ってくれる医師がいる。
長い療養生活を支えてくれる医療スタッフがいる。
だからこそ、その関係を大切にしたいと思っています。
しかし、信頼関係があるからこそ、疑問に思ったことを確認できる関係であってほしい。
そして医療機関側にも、患者から疑問を呈されたときには、誠実に説明していただきたいと思います。
医療における「信頼」とは、何でも無条件に信じることではありません。
説明し、確認し、納得する。その積み重ねによってつくられるものではないでしょうか。

医療費のチェックは、患者だけの問題ではない
今回、私が経験していることが、単なる事務上の間違いなのか、それとも別の問題なのか。
それについては、現在、医療機関からの説明を待っている段階です。
だからこそ、今の時点で特定の医療機関を名指しして、不正だと断定するつもりはありません。
ただ、一つだけ皆さんにお伝えしたい。
それは、
「医療費のお知らせが届いたら、一度は領収書と照らし合わせてみてください」
ということです。

もし何も問題がなければ、それでいいのです。
しかし、もし明らかな疑問が見つかったなら、「まあ、いいか」で終わらせない。
まず確認する。
説明を求める。
必要であれば保険者などに相談する。
そうした小さな行動が、結果として医療制度の健全性を守ることにつながります。
医療は、医師や医療機関だけでつくるものではありません。
患者もまた、医療を支える一員です。
だからこそ私は、医療機関を「疑う」のではなく、医療をより良くするために、患者自身も確認することが大切だと考えています。
信頼するからこそ、確認する。
そして、確認できるからこそ、本当の信頼が生まれる。
今回の出来事が、皆さん自身の「医療費のお知らせ」を一度確認してみるきっかけになればと思います。

