一見やわらかく、押せばへこむのに、決して壊れず、元に戻ってしまう壁
このイメージから生まれた心理的メタファーです。お聞きになったこと、ありますか?

■ ① 他者とのコミュニケーションでの「ゴムの壁」

相手がこちらの言葉をいったん受け止めるように見えるのに、本質的にはまったく響いておらず、いくら話しても中に入っていかない状態を指します。

  • 「そうですね、わかります」と言うのに、結局まったく行動が変わらない
  • こちらの気持ちを返してはくれるが、本質的な“つながり”が感じられない
  • 話が“吸収されず”“跳ね返される”ような感覚

この場合の「ゴムの壁」は、防衛的な心理、自己保全、感情を感じたくない回避などが背景にあることが多いようです。

■ ② 自己の内面にある「ゴムの壁」

自分の中に潜んでいる、
変わりたいのに変われない・気持ちを直視できないときの内部抵抗を指す場合もあります。

よくある背景

  • トラウマや傷つき体験を守る“こころのクッション”
  • 親密さへの恐れ
  • 批判・失敗への防衛
  • 自己像が崩れることへの無意識の回避

この「ゴムの壁」があると、外からのフィードバックやアドバイスが入ってこない、自分の感情も扱えない、そんな心理的停滞が生まれます。

■ ③ どのように接すれば?

**「言葉ではわかっているけど、心には届かない」**ときに「ゴムの壁がある状態」と表現されることがあります。

これは病気ではなく、誰にでも起こりうる普通の心理的防衛メカニズムです。

🧩 なぜ「ゴム」なのか?

  • 硬くはない: 一見柔らかく対応できる
  • 壊れない: 根本に触れる前に弾き返す
  • すぐ元に戻る: 変化(学習・気づき)が持続しない

という特徴を示すための比喩です。


🌱 「ゴムの壁」があるときのヒント

  1. 急がない
    壁は急に破れるものではなく、時間が必要です。
  2. 安全な関係づくりが最優先
    壁は“危険”を感じると厚くなります。
  3. 感情への直接的アプローチを避ける
    いきなり核心に触れるより、周辺を丁寧に扱うことで薄くなります。
  4. 体験ベースの関わり
    「気づき」より「経験」が壁を弱めます。

このような考え方での対応が良いと聞きます。

様々なシーンにおいて、たとえば①「医師と話すときのポイント」や、②社会のつながりをつくる活動にも、実はこの“ゴムの壁”の存在は非常に重要な概念だと思います。人は皆、心にそれぞれのゴムの壁を持っており、その厚みがコミュニケーションの難しさを生みます。

明日以降、①と②について考えていきたいと思います。