皆さんはご経験ありませんか?「明らかに間違った答えでも多数派に同調してしまう」それは『同調現象』と言われていまして、時には、何らかの要因でその答えが否定されると「私、実はおかしいな~って思ってました!」というような発言も聞いたりします。その事も、その現象の一部と、私は思っております。その現象を考えてみます。

特に有名な実験の一つに、ソロモン・アッシュ(Solomon Asch)による「アッシュの同調実験」があります。この実験は、個人が明らかに間違った多数派の意見に同調するかどうかを調べるものでした。動画でまとめた物がありましたのでアップロードします。

どうです?分かりやすいですね。

そして、同調には種類があります。
情報的同調: 他者の意見や行動を正しい情報源として捉え、自分の行動や信念をそれに合わせること。
規範的同調: 社会的な承認を得るため、あるいは拒絶を避けるために他者の期待に応える行動をすること。
さらには、日本の文化における同調
日本の文化は、集団主義的な傾向が強く、調和や協調が重要視されるため、同調の影響が特に強いと言われています。これは、個人よりも集団全体の和を重んじる文化的背景に基づいています。

同調の研究は、社会心理学において非常に重要なテーマであり、集団の意思決定や個人の行動に対する影響を理解するための基礎となっています。この現象は、ビジネス、政治、教育など様々な分野での意思決定や行動に関して、応用されています。

動画の中にもありましたが、同調現象の中において、「少数派の影響」という現象があります。それは同調に関する重要な側面の一つです。それは、一人でも反対者がいると被験者が正しい意見を表明しやすくなることが示されていました。この現象は、次のような理由で起こります。

少数派の影響
意見の多様性が増える: 一人でも反対意見が出ることで、意見の多様性が認識され、他のメンバーが自分の意見を表明することへの心理的障壁が下がります。これにより、他のメンバーもより自由に自分の考えを述べることができるようになります。
勇気を与える: 少数派が自分の意見を表明することで、他のメンバーも同様に反対意見を出す勇気を得ることがあります。これは「社会的な証拠」として機能し、「自分だけではない」という安心感を与えます。
一貫性と信念の強さ: 少数派の意見が一貫している場合、その意見が多数派にも影響を与えることがあります。一貫性と信念の強さは、他者に対する説得力を増す要素です。

集団現象としての少数派の影響
少数派の影響もまた、集団現象の一部として理解されます。集団内の意見が多様であることは、よりバランスの取れた意思決定を促進する要因となり得ます。多様な意見が交わされることで、集団のメンバーはさまざまな視点を考慮するようになり、結果としてより包括的な結論に達することができるからです。少数派の存在が同調圧力を緩和し、個々のメンバーが自由に意見を述べやすくするという点で、これは集団における重要な心理的プロセスといえます。

●同調現象の中で、先述しましたが、「情報的影響」と「規範的影響」について例を挙げて説明します。


情報的影響(Informational Influence)
情報的影響は、他者の意見や行動を正確な情報源として捉え、自分の行動や判断をそれに基づいて修正する現象です。この影響は、特に状況が不確実で自分自身の知識が不十分な場合に強くなります。

例1: 新しいレストランに行く時に、そのレストランが良いかどうかわからないため、他の顧客のレビューや評価を参考にする。この場合、他者の意見が正確な情報として使われ、自分の判断に影響を与えます。
例2: 新しい職場で仕事を始めた時、どのように業務を進めれば良いかが分からないため、同僚のやり方を見て自分の方法を調整する。この場合、同僚の行動が情報源となり、自分の行動に影響を与えます。

規範的影響(Normative Influence)
例1: 友人グループの中で誰もがある特定のファッションスタイルを好んでいる場合、そのグループに受け入れられるために自分も同じスタイルを取り入れる。この場合、友人グループの期待に応じることで社会的な承認を得ようとしています。
例2: 仕事の会議で、自分の意見が少数派であると感じたため、多数派の意見に合わせて賛成する。この場合、他のメンバーとの対立を避けるために規範的に同調しています。

両者の違い
情報的影響: 主に他者の意見や行動を正しい情報源として捉え、状況に対する理解を深めるために生じる。同意する理由は情報の正確性に基づく。
規範的影響: 主に社会的な承認や拒絶を避けるために、集団の期待や規範に従うことで生じる。同意する理由は社会的な和や関係を保つため。
これらの影響は、日常生活や職場、教育など様々な場面で見られる現象であり、人間の行動や意思決定に対する理解を深めるために重要です。

参考としまして「規範的影響(Normative Influence)」の典型的な例を二つ挙げてみます。人々が本心では異なる意見を持っていても、多数派の意見に同調する理由は、批判や拒絶を恐れ、社会的な承認や集団内の和を保つためという自己解釈があっても良いとは思いますが、集団全体のクオリティー向上には足かせとなる場合があります。

規範的影響の詳細と具体例
説明:
規範的影響は、個人が社会的な承認や受容を得るために、または社会的な拒絶や批判を避けるために、他者の期待や集団の規範に従うことです。この種の影響は、特に集団内の人間関係が重要な場合に強く現れます。
具体例
職場の会議:
状況: 会議で新しいプロジェクトの進め方について議論しているとします。あなたは、新しい提案に問題があると感じていますが、上司や同僚の大多数がその提案を支持しています。
行動: 批判を恐れて、または上司や同僚との関係を悪化させたくないために、自分の意見を控え、多数派の意見に賛同します。
結果: 会議後、自分の本心とは異なる決定に関わったことにストレスや不満を感じるかもしれませんが、表面的には集団の和を保つことができます。

友人グループの会話:
状況: 友人グループがある映画について話している時、ほとんどの友人がその映画を非常に良かったと褒めています。あなたは実際にはその映画があまり好きではなかったのですが、グループの中で批判的な意見を述べるのをためらいます。
行動: 批判を避けるため、または友人関係を保つために、自分も映画が良かったと賛同します。
結果: 内心では異なる意見を持っているため、不満や孤立感を感じるかもしれませんが、友人グループの和を乱すことは避けられます。

規範的影響の心理的メカニズム
社会的承認の欲求: 人は社会的な動物であり、他者からの承認や受容を求める傾向があります。集団内での承認を得ることで、自尊心や社会的な安全感が高まります。
批判や拒絶の恐れ: 批判や拒絶は心理的な痛みを伴うことが多く、人はそれを避けるために行動を調整します。これは、特に集団内の関係が重要な場合に顕著です。
集団の和の重視: 特に日本のような集団主義的な文化では、個人よりも集団の和や調和が重視されるため、規範的影響が強くなります。

このような状況では、自分の意見を表明する勇気が求められますが、社会的なリスクを考慮すると、多くの人が規範的影響に従う傾向があります。特に、シニア世代が多い集団の場合、その原理が顕著に表れると思います。その場合、その事を理解できているリーダーの存在が、健全な集団存続のキーになりますが、現実は難しい部分と思います。ですので、『飲みアローグ』の勧めに結び付くという事になります。