『機能固定理論』えらく固い表現ですが、日常的に陥りやすい現象です。この理論は、問題解決の過程において人々が特定のアプローチや戦略に固執し、新しい方法や創造的な解決策を見つけるのが難しくなる現象を説明する理論で、これは「メンタルセット」という、問題解決や意思決定において特定のアプローチや方法に固執する心理的傾向とも関連します。

例をあげてみます。・・・

文房具の利用:クリップは紙を留めるために使われるものと考えるあまり、針金の代わりに使ったり、鍵を開ける道具として使ったりする可能性に気づかない。
コンピュータの利用:問題を解決するために常に特定のソフトウェアやプログラムを使う。新しいソフトウェアや方法があるのに、それを試すことをためらう。
料理:レシピ通りにしか料理を作らないため、材料が足りないときに代替材料を使うアイデアが浮かばない。
家具の配置:家具を同じ場所に置き続け、新しいレイアウトを試さない。これにより、部屋が狭く感じたり、動線が悪くなったりすることがある。
仕事の手順:常に同じ手順で業務を行うため、効率的な新しい方法やツールを導入する機会を逃す。
道具の利用:ドライバーはネジを回すためのものと考え、他の用途(例えば、蓋を開ける、物を持ち上げる)に使う可能性に気づかない。
教育:教師が特定の教科書や教材に固執し、他の方法やリソースを利用しないため、生徒に対して一面的な教育になってしまう。
創造的な活動:アーティストやデザイナーが特定のスタイルや技法に固執し、新しいスタイルや技法を試すことを避ける。これにより、作品がマンネリ化する。

これらの例は、機能固定がどのように日常生活や仕事に影響を与えるかを示しています。柔軟な思考と多様なアプローチを持つことが、機能固定を克服し、創造的な問題解決を促進するために重要です。

さらに・・・

輸送手段:通勤に車を使うことに固執し、公共交通機関や自転車、徒歩といった他の選択肢を考えない。
掃除:床掃除には必ず掃除機を使うと決めているため、ほうきやモップ、ロボット掃除機などの他の方法を試さない。
問題解決の会議:いつも同じ会議形式(例えば、全員が集まる会議室での会議)を使用し、オンライン会議やブレインストーミングセッションなどの他の形式を試さない。
ガーデニング:いつも同じ種類の植物や花を植えるため、異なる植物やデザインを試す機会を逃す。
フィットネスルーティン:常に同じ運動(例えば、ランニングや特定のジムの機械)を行い、新しい運動やトレーニング方法を試すことを避ける。

これらの例も、機能固定が多くの分野でどのように現れるかを示しています。多様なアプローチや方法を試すことで、固定された考え方から抜け出し、より効果的で創造的な解決策を見つけることができます。

そして、政治における機能固定現象も多く見られます。以下にいくつかの例を挙げます。

政策の継続:ある政策が過去に効果的だったため、状況が変わってもその政策を変更しない。新しい問題や変化した環境に対応するための柔軟なアプローチが取れない。
政党のイデオロギー:政党が特定のイデオロギーや立場に固執し、現実の問題に対して柔軟に対応できない。これにより、党内での革新や変革が難しくなる。
外交戦略:特定の国や地域に対する外交戦略が固定化され、新しい状況や他の国との関係改善の機会を逃す。歴史的な敵対関係に基づいて行動することが多い。
予算配分:予算の配分方法が固定化されており、新しいプロジェクトや必要な分野に十分な資金を割り当てられない。既存のプロジェクトや部門に資金が集中する。→利権の発生・集中


法制度の改正:既存の法律や制度に固執し、新しい技術や社会の変化に対応するための法改正が進まない。例えば、インターネットやデジタル技術に関する法律が古いままの場合がある。
行政手続き:行政手続きや規制が固定化され、効率的な手続きや改革が進まない。官僚主義が強く、新しい方法や技術の導入が遅れる。
教育政策:教育政策が古いままで、新しい教育方法やカリキュラムの導入が進まない。これにより、学生が最新の知識やスキルを学ぶ機会が減少する。
都市計画:都市計画が過去の基準に基づいているため、新しい交通インフラや持続可能な都市開発の計画が進まない。これにより、都市の発展が停滞することがある。

これらの例は、政治における機能固定がどのように現れ、社会全体に影響を与えるかを示しています。柔軟な思考と新しいアプローチを採用することが、政治の分野でも重要です。既に出来上がっているシステムを、社会的変化に沿うような形にリノベーションするにあたっての、障壁になるケースが多く見受けられます。