令和という時代になり、様々な変化が起こりつつあります。例えば、選挙においてSNS戦略が重要なポイントになってきています。以前では考えられなかったことです。しかしながら、その一方で、集団心理には落とし穴が潜んでいるのではないでしょうか。

このように変化が進む中で、人の幸福とは本当は何なのでしょうか。いわゆる「令和の幸せ」とは何なのか。最終的には人それぞれの価値観によるところが大きいと思いますが、日本人は特にこのテーマに向き合うことが苦手なのではないかと感じています。つまり、「幸せ」について口にしたり意識したりすることを、どこか恥ずかしいと感じる傾向があるのではないでしょうか。

そうではなく、幸せを意識し、それについて普通に語り合える社会的な感覚へのシフトが求められているのだと思います。幸せを意識することで、それは秘め事ではなくなり、むしろ各自の選択を支えるツールとなり得るのではないでしょうか。私は、そのような考え方を「令和の幸せ」と呼びたいと感じています。その部分を考えてみました。

  1. 「幸せ」に対する意識の変化
    令和の時代では、物質的な豊かさだけでなく、精神的な充足感や人間関係の質、自己実現の重要性がクローズアップされています。この傾向は、グローバルな「ウェルビーイング」や「サステナブルな幸福」の潮流とも共通します。日本においても、こうした「幸せ」に対する価値観の変化は起きていますが、それを公然と語ることがまだ一般的ではない、というのは確かに課題だと思います。
  2. 「恥ずかしさ」という文化的バリア
    日本文化には、「個人的な幸福を強調すること」への抵抗感があると言われます。それは、周囲との調和を重んじる価値観や、自己主張がネガティブに捉えられる風潮に由来している部分があるでしょう。この文化的なバリアが、幸せを口に出すことを難しくしている一因かもしれません。
  3. 「令和の幸せ」としての社会的共有
    「幸せを意識し、それを普通に話せる社会感覚へのシフト」が求められていると感じていますが、そのためには、次のような要素が重要と思います。
    ・幸せの定義の多様性を認めること:誰かの幸せを否定せず、他者の価値観を尊重する文化を醸成する。
    ・幸せを語る場の創出:例えば、ワークショップやSNSキャンペーンを通じて、「私にとっての幸せ」について自由に話し合える場を提供する。
    ・ポジティブな言葉の普及:幸せについて語ることを肯定的に捉えるため、メディアや教育で「幸せを表現する言葉」を推進する。
  1. 具体的な実践アイデア
    ・「幸せ日記」の普及:SNSやアプリで、日々の小さな幸せを記録・共有する運動を展開。
    ・「幸せを語る」イベント:地域や職場で、幸せをテーマにした対話の場を作る。
    ・教育現場での意識改革:子どもたちに「幸せを言語化すること」を推奨する教育プログラムを導入。

    「令和の幸せ」とは、個々人が自分にとっての幸せを自由に定義し、それを他者と共有することで、社会全体が共感や理解を深めていくプロセスとも言えるかもしれません。このプロセスを可能にするためには、「幸せを語ること」に対する抵抗感を少しずつ解消し、自然に共有できる文化を育むことが重要だと思います。

次に上記No.3の”「令和の幸せ」としての社会的共有”について、深堀してみます。意識の変化は、文化的、社会的、経済的な背景に深く関連しており、それぞれの側面から掘り下げることで、より多角的に理解できると思います。

  1. 文化的背景からの変化
    a. 集団主義から個人主義へのシフト
    日本は長らく集団主義的な価値観を重視してきましたが、近年では個人主義的な考え方が徐々に浸透しています。これはグローバル化や多様なライフスタイルの受容が進んだ結果と言えます。この変化により、「他者に合わせる幸せ」よりも、「自分自身の価値観に基づく幸せ」を求める人が増えています。

  b. 精神的な豊かさへの重視
 昭和や平成初期の高度経済成長期には、物質的な豊かさが幸せの象徴でした。しかし、物質的豊かさを手に入れた後、心の豊かさや人間関係、自己実現の重要性が認識されるよう
になりました。これに伴い、「生きがい」や「心の平穏」を重視する価値観が広がっています。

 c. マインドフルネスやウェルビーイングの影響
 欧米発のマインドフルネスやウェルビーイングといった概念が日本にも取り入れられ、幸せを「外的な成功」ではなく「内的な充足感」として捉える風潮が強まっています。特に
令和時代では、SNSを通じてこうした新しい価値観が若年層を中心に拡散しています。

  1. 社会的背景からの変化
    a. 人口減少と高齢化
    日本では少子高齢化が進み、「全世代型社会保障」といった新しい制度が議論されています。この中で、「家族」や「コミュニティ」が持つ幸せの役割が見直されつつあります。家族の形が多様化する中で、一人ひとりの幸福感を支えるための社会的な枠組みが求められています。

  b. コロナ禍による価値観の変化
  コロナ禍は人々の価値観に大きな影響を与えました。健康の大切さや人とのつながりの価値を再認識した人が増え、「近くにある小さな幸せ」を重視する傾向が顕著になりまし  た。また、リモートワークの普及によって、仕事と生活のバランスを見直す動きが加速しました。

  c. 多様性の受容
  LGBTQ+や異文化理解、ジェンダー平等といった多様性の問題が社会の重要なテーマとなる中で、「自分らしく生きること」が幸せと直結する価値観が広まりつつあります。この
流れは特に若い世代で顕著です。

  1. 経済的背景からの変化
     a. 経済成長の停滞と新たな幸せの定義
    バブル崩壊後の長期的な経済停滞により、「物質的な成功=幸せ」という図式が通用しなくなりつつあります。特に令和世代は、贅沢品よりも「体験」や「共有」に価値を置く傾向が強いです。例えば、旅行や趣味、自己投資にお金を使う人が増えています。

   b. ミニマリズムとサステナブルな生活
 「少ないもので豊かに生きる」というミニマリズムや、「地球や社会に優しい選択が幸せを生む」というサステナブルな価値観が浸透しています。これは、持続可能な社会を目指す動きと一致しています。

  1. 心理学的な視点からの変化
    a. 幸福学の普及
    ポジティブ心理学や幸福学の研究が進み、幸せに関する科学的な知見が広がっています。例えば、感謝の気持ちを持つことや他者に貢献することが幸福感を高めるという研究結果は、多くの人に影響を与えています。

  b. 幸福の「社会的伝染効果」
 幸福は個人だけでなく、社会全体に波及することが研究で示されています。つまり、自分の幸せが家族や友人、さらには職場や地域社会にも影響を与えるため、「幸せを共有すること」が重要だという意識が広がっています。

  1. 令和における「幸せの意識」のまとめ
    令和の幸せは、次の3つのポイントに集約されると言えるでしょう。

「自己実現と多様性」
自分らしさを尊重し、他者の幸せも尊重する姿勢。

「小さな幸せの発見」
日々の中で小さな喜びや感謝を見つける視点。

「共有とつながり」
幸せを他者と共有し、社会全体のウェルビーイングを高める行動。

こうした意識が広まれば、「幸せ」が秘め事ではなく、社会全体で支え合う価値観として根付いていくでしょう。